人の絆がつないだ、奥能登のブルーベリー農園

人の絆がつないだ、奥能登のブルーベリー農園

能登町・柳田地区でブルーベリー栽培が始まったのは今からおよそ40年前。先進的な栽培法をいち早く取り入れた、日本におけるパイオニア的な存在です。

そんな柳田で15年前から運営する『ひらみゆき農園』。震災を乗り越えた背景には、復活を願う沢山の人たちの姿がありました。

■柳田は、能登の中でもとりわけ積雪の多い地域。夏と冬の寒暖差によって甘みの強いブルーベリーに育つと言います。

「しっかりと自分の目で見て、手をかける分だけ、おいしいブルーベリーになると感じます」
と、『ひらみゆき農園』の代表である平さんは語ります。

能登の大地に地植えして栽培されるブルーベリーを、すべて手摘みで収穫し、一粒一粒目視で選定。
ちいさな実には、たくさんの愛情が込められています。

そんなブルーベリーに襲い掛かった、2024年1月1日の震災。
電気も道路も復旧の見込みが立たない中、出荷の手段が絶たれた大量のブルーベリー。
真冬の寒さが不幸中の幸いとなり、品質には問題のない状態ではありましたが、
どうしたらいいものか、困り果ててしまっていました。

手を差し伸べてくれた仲間たち。復活への道が切り拓かれていった

復活への道のりに手を差し伸べてくれたのは、10年来の付き合いである『ウフフドーナチュ』さんだったと言います。
地物素材を取り入れた商品に積極的な『ウフフ』さんにブルーベリーを提供する間柄。
なんと、大変な状況にある平さんに代わってオンラインショップの運営を引き受けてくれることに。

被災した自社の加工場に代わる施設を提供してくれたのは、金沢の農業仲間である『きよし農園』さん。
力添えにより、無事に美味しいブルーベリーソースを完成させることができました。

こうして、多くの人の支えによって、大切なブルーベリーをお客さんに届けるための道を切り拓くことができたのです。

「金沢へ商品を輸送する過程では、見ず知らずの方々にまで助けていただいた。本当にありがたかった」
と平さん。

■人々の想いがつないだブルーベリー。規格外の実も余さず利用し、美味しいソースやカレーに加工。

加工品でも「自然のまま」のおいしさを伝えたい

『ひらみゆき農園』では、その年に収穫したブルーベリーを、果実がごろごろと入ったソースに加工。 砂糖を使用しないため、使用するブルーベリーの味の微妙な違いが商品に直接表れます。

「均質な味わいに整えようとせず、あえて自然のままにしています。素材本来のおいしさを楽しんでほしい」
と平さん。

ブルーベリーカレーは地域の福祉施設と連携して製造。ブルーベリーとカレー、なんとも意外な組み合わせです。

「開発は、やはり難しかったです。イタリアンやフレンチなど、分野の異なるシェフに意見を聞きながら、理想の味に近づけていきました」
試作を重ね、甘口ながらスパイシーな、絶妙なバランスのカレーが完成しました。

■地震によって地割れが発生した農園。社屋にも大きな被害がありました。

まだまだこれから。美味しさを届けることで復興につなげたい

「製造・販売の再開はできたものの、”復旧”はまだまだ進んでいない」
と平さん。壊れた社屋や店舗にブルーシートをかけ、なんとか運営を続けている業者が多い状況だと言います。本当の復興はこれから。

今、必要な支援とは?
「出会った人たちに農園のことを広めていただき、多くの方に商品を手に取っていただくことができました。リピーターになってくれる方も増えて嬉しい。能登には美味しいものがたくさんあります。商品を通じて、長く復興を支えていただけたら」。

愛情を込めて育てられたブルーベリーがたくさんの人のもとに届き、能登との縁をつないでいく――
そんな光景が目に浮かびます。

■6月中旬からはブルーベリー摘み体験もできる『ひらみゆき農園』。取れたてのブルーベリーを味わいに、ぜひ訪れてみては。

<じのもんオンラインショップで販売中>

ごろごろ果実の能登ブルーベリー

まるごと果実の能登ブルーベリーカレー


ひらみゆき農園
TEL 090-8260-0403
石川県鳳珠郡能登町笹川イ2
営/10:00~16:00
休/土曜、日曜、祝日
※観光農園、キッチンカーの営業日はInstagramにて随時配信
[X]@hiramiyuki_farm
[Instagram]@hiramiyuki_farm


じのもんライター:中嶋 美夏子

大学進学を機に金沢へ。おいしい食べ物と暮らしに根付く美意識に感動し、日々探求しているうちにいつの間にか十数年が経ってしまった。人々のなにげない日常が撮りたくて、ちょっとしたお出かけでもいつもカメラと一緒。能登からやってきた保護猫とふたり暮らし。

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