「じぶ煮巻」に込めた、金沢の食文化への真摯な思い
昭和54(1979)年創業の食品メーカー『金沢錦』は、創業当初からオリジナル商品「じぶ煮巻」を作り続けています。
この一品を通じて、金沢の人々に喜ばれ、金沢に貢献しつづけるために『金沢錦』が大切にしている「時代が変化しても変わらないもの」が見えてきました。

■すだれ麩にしみ込んだお出汁が口の中でじゅわっと広がるおいしさです。
他社にない独創性、しかも割烹のように上品な味を作りたい
じぶ煮は、金沢を代表する郷土料理。
「とろみのある出汁で“じぶじぶ“と煮るから」など、その名称の由来には諸説あるそうです。
そのじぶ煮をベースに作ったオリジナル商品が、『金沢錦』の「じぶ煮巻」。
にんじん、椎茸、れんこんなどの治部煮の具材を
すだれ麩で巻き寿司のようにぐるりと巻き、じっくりと煮込んで作ります。
1979年の創業当初から、本物の味を嗜好する金沢人から愛され続けるロングセラー商品。
どのようなきっかけで始まったのでしょうか?
三代目社長の佃さんに、その歴史についてお聞きしたところ、
「先代社長が会社を立ち上げる際『金沢錦』の看板商品を作ろうと考案したのがはじまり」
とのこと。
それは「金沢ならではのコンセプトを感じさせ、独創的で、手間暇がかかっていることがわかり、なおかつ割烹料理店でも扱ってもらえるような品のある味付け」
という条件を自らに課した挑戦だったのだと言います。
その中で作り出された商品の一つが、「じぶ煮巻」。
質の高さを評価され、割烹料理店、料亭、ホテルの和食店など
年を重ねるごとに取扱店が増え、今に至るのだそうです。

■窯場での作業風景。人の手によって丁寧に作られます。
作りたいのは“THIS IS 金沢テイスト”な味わい
金沢に暮らす人を想い、良い食品を提供することで金沢への貢献につなげたい。
『金沢錦』をはじめ、
そうした気持ちで食品の生産・製造に取り組む人たちが、金沢には多く存在します。
そんな人々と共に頑張りたいという思いから、
『金沢錦』では金沢やその近郊の食材・調味料をできる限り多く使用しているのだと言います。
例えば、金沢市大野の『ヤマト醤油味噌』。
同社の丸大豆しょうゆは、創業当初から『金沢錦』の味の決め手となる欠かせない存在です。
ほかにも、金沢市石引で酒造りをする『福光屋』、金沢市野町の『今川酢造』など、
昔ながらの手仕事を大切にする老舗の名前がずらり。
「本物の原材料・調味料を追求し続け、使い続けること。特に地元の調味料をより多く使用することによって”THIS IS 金沢テイスト”と言える味わいになっていくと考えています」
と佃さん。

■ふんだんに使われた地元の調味料が、金沢ならではの味を醸し出す。
加速度的に変化する時代。でも、信念は絶対に変えてはいけない
金沢の食文化とともに歩む中で、時代の変化を感じる場面も多いと言います。
「想像以上のスピードで変化する時代。食品の安全性向上など、時代に合わせて変えていく必要のあるものも多い」
と佃さん。
その一方で「絶対に変えてはならない」ものもあると考えています。
「創業当時から、『原料の厳選』『加工段階の純正』『変わることのない企業ポリシー』『99%消費者の立場という自覚』という四原則を変わらずに守り続けています」
揺るぎない信念があるからこそ、変えるべきところは柔軟に変えていくことができるのですね。
「味をより良くするための工夫は、現在に至るまで絶え間なく積み重ねてきました。しかし、『地元金沢が誇る、本物の原材料・調味料を使い続けていく』というこだわりは、創業以来一切変わっていません」
お話してくださった言葉の一つひとつから、金沢の食文化と共に歩んでいきたいという真摯な気持ちが伝わってきました。

■創業当時から金沢人に愛されてきた「変わらない味」を楽しんで。
<じのもんオンラインショップで販売中>
金沢錦
076-257-1878
石川県金沢市横枕町ハ13
営/9:30~17:30
休/土曜、日曜、祝日
[HP]https://ec.k-nishiki.com/
[Instagram]@kanazawanishiki

じのもんライター:中嶋 美夏子
大学進学を機に金沢へ。おいしい食べ物と暮らしに根付く美意識に感動し、日々探求しているうちにいつの間にか十数年が経ってしまった。人々のなにげない日常が撮りたくて、ちょっとしたお出かけでもいつもカメラと一緒。能登からやってきた保護猫とふたり暮らし。