キラリと輝く赤い実が、晩秋の能登を彩る。志賀町で400年続く伝統の「ころ柿」作り

キラリと輝く赤い実が、晩秋の能登を彩る。志賀町で400年続く伝統の「ころ柿」作り

豊かな里山と里海に恵まれた能登には、その風土を生かしたさまざまな伝統食が受け継がれています。

志賀町の「ころ柿」も、そのひとつ。山里に散在する集落には秋になると一斉に赤い柿の実が吊るされ、風物詩として見る人の心を癒しています。

■特に石川県では冬の高級な贈答品としてよく知られる存在です。

ころ柿とは、干し柿の一種。

志賀町特産の干し柿専用渋柿「最勝柿」の皮を一つひとつ丁寧に剥き、じっくりと時間をかけて乾燥させることで作られます。

晩秋の澄んだ空気と冷たい風が果実の甘みをぎゅっと凝縮させ、奥深い味わいに。
自然が育む、季節限定の特別な甘味です。

■一つひとつ手作業で吊るされた柿に、風を当てて乾燥。

古くから伝わる製法を守りながら、美味しくなる工夫も

「もともとは勤め人だったんです。ころ柿づくりは55歳のときに継ぎました」。

幼いころからお母様がころ柿を作る背中を見て育ったという『志賀の郷農園』の小寺さん。
農園を始めて、今年で17年目になります。

およそ400年前からこの地で生産されているというころ柿。
古来よりの伝統を守り続ける生産過程は、ほとんどが手作業によるものです。
11月の初旬頃に収穫される最勝柿は、選果、皮むき、手くくり、燻蒸、自然乾燥、風による乾燥、取り込み、粉だし、整形と、いくつもの工程を経て、ようやく美味しいころ柿に。
手間暇をかけるぶんだけ美味しく仕上がります。

「手順は昔からのまま。でも、わたし独自の工夫は沢山あります。風の当て方や風量ひとつで、仕上がりには大きな差が出るんですよ」
と小寺さん。

■表面の白い粉は、柿からにじみ出た糖分が結晶化したもの。やさしい自然の甘みです。

宝石のように綺麗なころ柿を作りたい

『志賀の郷農園』のころ柿は、やわらかな肉質ととろける舌ざわりが特徴。
生の柿の味わいをそのまま凝縮したようなジューシーな甘みに、初めて食べた人は「干し柿とは思えない」と驚くと言います。

最終的な加工を行うのは、小寺さんと同じ年にころ柿生産の専業になったという小寺さんの奥様。二人三脚で歩んできました。

仕上がりとして目指すのは、美味しいだけではなく、綺麗なころ柿。

その言葉の通り、表面は初雪が降ったようにキラキラ。
つやつやと飴色に透き通る断面は、まるで宝石のようです。

「薬品を使って熟成を早める方法もありますが、うちでは一切やらないようにしています」。

決して効率は良くありませんが、小寺さんご夫妻が目指す「綺麗なころ柿」の姿は、あくまで伝統を守り抜くことによって完成するのです。

この伝統を未来へと受け継ぐ職人として、どのような想いをお持ちですか?とお聞きすると、
しかし、小寺さんは
「そんな大層なことは考えておりませんよ」
と、照れくさそうに笑います。

「でも、うちのころ柿を見ると、ほかのとは何かが違うなと感じるでしょう?」

優しい語り口の奥から、高みを目指して歩み続ける職人の矜持がキラリと光って見えました。

■1月から3月までの限定商品。この季節だけの味を楽しんで。

<じのもんオンラインショップで販売中>

志賀の郷農園のころ柿(3個/8個/12個)

志賀の郷農園のころ柿・刻み(6袋)


志賀の郷農園 
0767-36-1586 
石川県羽咋郡志賀町安津見と24番地3 
営/9:00~17:00
休/土曜、日曜、祝日


じのもんライター:中嶋 美夏子

大学進学を機に金沢へ。おいしい食べ物と暮らしに根付く美意識に感動し、日々探求しているうちにいつの間にか十数年が経ってしまった。人々のなにげない日常が撮りたくて、ちょっとしたお出かけでもいつもカメラと一緒。能登からやってきた保護猫とふたり暮らし。

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