【後編】能登の空気を肌で感じながら、勤勉に、丁寧に。先代の想いを受け継ぐ「日本一のしいたけ」
能登・柳田地区で菌床しいたけの栽培をする『のとっこ』の二代目、上野さんご夫妻。栽培するしいたけは品評会で日本一に輝いたこともあり、品質の高さは折り紙付きです。
後編では、能登のしいたけ栽培を盛り上げるべく、二代目が始めた新たな挑戦についてご紹介します。
(前編はこちら)

■可愛らしい瓶の中には、能登への愛がぎっしり詰まっています。
二代目として、柳田のしいたけをもっと盛り上げたい!
そのための新しい取り組みとして、しいたけを加工した食品を作れないかという思いが朋子さんにはありました。
「先代には、加工品は難しいぞと再三言われていました。でも、やってみたかったんです」
と朋子さん。
それはなぜ?と尋ねると、
「本当の”能登のお土産”を作りたかったんです」
との答え。
「世の中にはいろいろなお土産の形がありますが、私は能登の地で採れたものを使い、能登の地で製造されたお土産が素敵だなと常々思っていたんです。それを自分でも作ってみたいと」。

■「子どもにも安心な品質を」という思いで、厳選した原材料のみを使用しています。
たどり着いたのは「ごはんのおとも」
そこで新たに開発したのが「おかずしいたけ」。フードコーディネーターさんからアドバイスを貰いつつ、幅広い方に愛される味わいを目指しました。
甘辛い味付けは、子どもにも人気。ごはんが進む一品です。 瓶の中には、自社栽培のきくらげも入り、食感のアクセントに。
「肉厚しいたけがゴロゴロ入った贅沢な仕上がりが自慢です。材料を惜しげもなく使えるのは農家ならではですよね」。
もうひとつが、乾燥しいたけ。
味は良いのに見た目が地味で売れにくいのが悩みでした。
そこで、可愛いラベルと自立する袋に変更。すると一気に販路が広がり、多くの人に『のとっこ』を知ってもらえるようになりました。
今ではどちらも大人気商品。全国の人たちに柳田のしいたけを発信してくれています。

■収穫したばかりのしいたけ。サイズごとに仕分けされ、全国へ出荷されます。
「日本一のしいたけ」でみんなに喜んでもらいたい
独り立ちしてから、約5年。
最初と比べると随分少なくはなったとはいえ、ときには失敗もあると言います。
そのひとつが、予期せず大量のしいたけが生えてしまう現象。
「一度にたくさん生えてしまうと、なにより収穫が大変!従業員総出で収穫して、しいたけを詰めるコンテナが足りなくなってしまったことも」。
収穫量が増えるなら、問題ないのでは?と思いきや、
「一気に生えたしいたけは、味が落ちてしまうんです。密集して育つため、形もいびつになってしまう」。
しいたけは、思った以上に繊細なのです。
「夫も、トラブルが起きたときに相談できる相手がいたら…と思うことがあるのかもしれませんね」
と朋子さん。
頼れる人がいない分、自分で対処方法を見つけるしかない。
それでも、先代が遺した「日本一のしいたけ」を未来へとつなぐため、前を向いて進んでいます。
そして最後に、こんな言葉も。
「私たちは早い段階で事業を再開できましたが、被害が大きかった人はまだ何もできていない。みんなが復活する日まで、どうか、能登のことを忘れずにいてほしい」。
旅行者が訪れることができる場所が徐々に増えつつある能登ですが、その陰で痛ましい状況は続いています。
切実な言葉に、私も思わず考え込んでしまいました。
ひとつ言えるとしたら、柳田にはこんなにも思いが込められた、素敵なしいたけがあるということ。
能登のいいところを、またひとつ知りました。
これからも、もっと知りたい!新しい出会いにワクワクしたい!
私たちがそんな気持ちを持ち続ける限り、能登はいつだってそばにあるはず。
そんなことを思った、今回の取材でした。

■かわいいラベルの商品は、お土産にも贈り物にもぴったり。
<じのもんオンラインショップで販売中>
農事組合法人のとっこ
0768-76-0115
石川県鳳珠郡能登町字寺分ロ部15-8
営/9:00~17:00
休/土・日・祝
[Instagram]@notokko_shiitake

じのもんライター:中嶋 美夏子
大学進学を機に金沢へ。おいしい食べ物と暮らしに根付く美意識に感動し、日々探求しているうちにいつの間にか十数年が経ってしまった。人々のなにげない日常が撮りたくて、ちょっとしたお出かけでもいつもカメラと一緒。能登からやってきた保護猫とふたり暮らし。