能登の「いしり」は簡単に料理がレベルアップする万能調味料!『カネイシ』がその魅力を発信中。
「いしり」という調味料をご存知でしょうか?
いしりは、イカの内臓を長期間発酵させて作る魚醤の一種。 日本有数のイカの水揚げ量を誇る能登町で、古くから作られてきた伝統の調味料です。
そんないしりを長年にわたり製造し、その魅力を全国に発信する取り組みを続ける『カネイシ』の新谷さんにお話を伺いました。

■古くからイカ漁が盛んな能登町・小木港。イカの加工品にも長い伝統を持ち、地域に根付いています。
地元の人にとっていしりは決して特別なものではなく、普段使いの調味料なのだと言います。
煮物にも汁物にも、お鍋にも。和食に限らず、パスタにもチャーハンにも。漬物やおひたしなどにも使うのだとか。
日常に存在する、ごく当たり前の存在です。
ところが、『カネイシ』さんが能登以外の地域に向けていしりのPR活動を始めたところ、「どうやって使うの?」という質問が多く寄せられたのだそう。
確かに、日本の多くの地域では”魚醤”というもの自体にあまり馴染みがないかもしれません。
でも、一度試してみるだけで、地元の人たちがどんな料理にも気軽に使っている理由がわかるはず。
イカの風味と、発酵食品ならではの深いコク、うま味。
いしりは、料理にちょっぴり入れるだけで味がグンとレベルアップする”万能調味料”なのです。
「そこで、レシピの発信に力を入れることにしたんです」
と、当時を振り返る『カネイシ』の新谷さん。
日常の料理のなかでいしりを気軽に活用できるレシピを開発。サイトに続々と公開し、レシピブックも発行しました。
今では、いしりを使ってみたいと思ったときに誰でもすぐにレシピを見つけられる環境に。
もう「どうやって使うの?」と困ることはありません。

■魚醤特有のくさみが少なく、いしりが初めての人にもおすすめの「いしりラーメン」。
さらに手軽に。「いしりラーメン」への挑戦
『カネイシ』さんのいしり普及活動はさらに続きます。
今度は、普段あまり料理をしない人にもいしりの美味しさを届けたい。
そこで着目したのがラーメン。ラーメン店には、スープの隠し味としていしりを使用する店が以前から多く存在していたのです。
「それならば、自社ブランドのいしりラーメンを作れば面白いのでは?」
そのうえ、せっかくなら”石川県のお土産”として胸を張れるものが良い。
そこで共同開発を依頼したのが、石川県で広く愛される地元ラーメンチェーン『8番らーめん』です。
試作を重ねた結果、あっさりとした醤油ベースのスープに、いしりのうま味がほのかに香る一杯が完成。
狙い通り、お土産としても人気に。いしりの魅力はさらに多くの人たちへと届いています。

■断水が続く中、水道の復旧したエリアから水を運んで仕込みを行いました
震災を乗り越えたいしりが人々のもとへ。
2024年1月1日の震災。
『カネイシ』の周辺でも道路や水道などのインフラが崩壊し、製造は約3カ月間ストップしたと言います。
3月末にようやく水道が復旧し、1カ月遅れで仕込みを再開。生産量は例年の7割弱ながらも、なんとか生産を継続することができました。
しかし地域における震災の影響はいまだに色濃く、「復興を促進していかなければ」と、もどかしい思いを抱えています。
「いしりの文化をより一層発信していくことで、少しでも地域経済の助けになりたい」と、胸の内をお話してくださいました。
震災を乗り越えたいしりは、1年間の長い熟成期間を経てこの春から出荷。きっと、例年以上に力強い味わいに感じられるはずです。
能登の海の恵みをじっくり熟成させた、特別な調味料。
さて、今日はどんな料理を作りましょうか?

■いしりのレシピブックがセットになった商品も。魅力を存分に楽しんで。
<じのもんオンラインショップで販売中>
有限会社カネイシ
石川県鳳珠郡能登町小木18-6
営/8:30~17:30
休/土曜 日曜 祝日
[X]@kaneishicom

じのもんライター:中嶋 美夏子
大学進学を機に金沢へ。おいしい食べ物と暮らしに根付く美意識に感動し、日々探求しているうちにいつの間にか十数年が経ってしまった。人々のなにげない日常が撮りたくて、ちょっとしたお出かけでもいつもカメラと一緒。能登からやってきた保護猫とふたり暮らし。