七尾湾ですくすく育った能登かき。美味しさの秘密は「山からの恵み」?

七尾湾ですくすく育った能登かき。美味しさの秘密は「山からの恵み」?

能登の中央部に位置する七尾湾は牡蠣養殖が盛んで、穏やかな海に牡蠣棚の浮きが並ぶ光景が広がります。

約50〜60年前からこの地で牡蠣養殖を続ける『下村水産』。能登かきの魅力について、下村社長にお話を伺いました。

■牡蠣養殖では、ホタテ貝に牡蠣の稚貝を付着させたものをロープに挟み、海に沈めます。

能登は”海の町”という印象がありますが、実際に訪れてみると、海岸線のすぐそばに険しい山道が現れることに驚かされます。
海と山の密接な関係が豊かな恵みを生み出す場所、それが能登。
「能登の里山里海」として世界農業遺産にも認定される、世界的に見ても貴重な環境です。

「七尾湾も、そんな山と海のつながりが色濃く表れた場所」と教えてくれたのは、七尾で牡蠣養殖・牡蠣の加工食品製造を営む『下村水産』の三代目社長、下村さん。
里山で蓄えられた養分が川を伝って七尾湾へと流れ込み、この地で養殖される牡蠣を大きく育ててくれるのだと言います。

■水揚げした牡蠣の殻をむいた商品も。いろいろな料理に。

シンプルな料理でこそ引き立つ、素材の美味しさ

能登かきの旬は春の初めごろ。
「夏の産卵期に向けて、3月ごろに最も身が太ります。この時期の牡蠣は甘みもぐっと増して、牡蠣そのものの味を楽しむのにぴったりです」。
料理するにも、まずはシンプルに「牡蠣ポン酢」を試してみてほしいと下村社長。
さっと茹でた牡蠣にポン酢をかけて、お好みで大根おろしや薬味。
たったそれだけなのに、たまらない美味しさなのだと言います。

また、下村社長の代になって、オリジナル商品にも注力するように。
人気の「能登かきのオイル漬け」は、和風仕立てにこだわって開発されました。
「洋風のオイル漬け商品はニンニクが入っていることがよくありますが、食べられるタイミングが限られてしまうことを残念に感じていました」。
ニンニク不使用の和風味なら、白ごはんに乗せて朝からもりもり食べられる。もちろんお酒のおつまみにも。子どもから大人まで愛される味になったと自慢の一品です。

■ご飯との相性抜群の「能登かきのオイル漬け」。

この海で、漁師として生きること

美しい七尾の海のもとで育った下村社長。
一度はこの町を離れまったくの異業種で働いていましたが、5年前にUターンして家業を継いだのだと言います。
この仕事を始めて変わったのは、海との向き合い方。
「天気ひとつ取っても、晴れか雨かという単純な話ではありません。風の強さ、波の高さ。何時になったら風向きがこう変わる…というような細かなことまで気を配るのが漁師の仕事です。判断一つで命に関わることもありますから」。

ただ、そんな厳しい世界だからこそのご褒美も。
「風のない穏やかな海に朝日が昇る瞬間を見届けるのが好き。漁師の仕事はほんとうに重労働だけど、この仕事をやっていて良かった!と心の底から思える瞬間です」。

能登半島地震では、七尾にも大きな被害が。
3月頃まで続いた断水の影響で、牡蠣のむき身の生産や直売所の営業が中止になりました。
しかし不幸中の幸いが、牡蠣そのものへの被害が壊滅的ではなかったこと。
「牡蠣が全部流されてしまったのでは…と心配でしたが、なんとか持ちこたえてくれました」。
地震の荒波に揉まれて絡まった牡蠣棚を丁寧にほどき、一つひとつ原状復帰させて現在に至ります。

「今回の地震を通じて『能登にも牡蠣があったんだ』と知ってくださった方も多く、ありがたいです。産地としてはまだマイナーですが、美味しさでは有名な産地にも負けませんよ」
と下村社長。
この里山・里海の恵みを、もっと多くの人に届けたい。
そんな想いを胸に、今日も七尾の海と向き合っています。

■穏やかな七尾湾。今日も牡蠣がすくすくと育っています。

<じのもんオンラインショップで販売中>

能登かきのオイル漬け

能登かきむき身500g(2個)


株式会社下村水産
076-766-0896
石川県七尾市中島町浜田1-1
営/9:00~16:00
休/不定休
[Instagram]@shimomurasuisan
[X]@ shimosui_kaki


じのもんライター:中嶋 美夏子

大学進学を機に金沢へ。おいしい食べ物と暮らしに根付く美意識に感動し、日々探求しているうちにいつの間にか十数年が経ってしまった。人々のなにげない日常が撮りたくて、ちょっとしたお出かけでもいつもカメラと一緒。能登からやってきた保護猫とふたり暮らし。

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