やさしいおいしさに癒される『赤玉本店』の金沢おでん
いつ訪れても変わらない味、あたたかさ。
昭和2(1927)年創業の『赤玉本店』であつあつのおでんを味わいつつ、お店にまつわるお話を伺いました。
■片町アーケードや片町スクランブルを歩くとすぐに気づくほど、目を引く大きな赤のれん
入口に「商い中」の札がかけられるのを、今か今かと待ちわびる人の列が…。
これほどまでに多くの人から愛される『赤玉本店』は、最初からおでん屋さんではなかったと聞いて驚き!
「始まりは『カフェ赤玉』という店名の洋食屋だったんですよ」
そう話してくれたのは、4代目を目指す若女将の葉月さん。
■お店の中はカウンターがメイン。活気ある中でおでんを味わうと一層おいしい!
葉月さんの曾祖父は船のコックとして、栄養バランスを考えたバリエーション豊かな料理を作っていたそう。
その経験から、昭和2(1927)年に葉月さんの曾祖父が、現在の場所で洋食屋を開業。
ですが、激動の昭和初期ともあって不幸にも急逝し、残された妻――葉月さんの曾祖母が選んだのが「おでん屋」でした。
「自分はコックではないから洋食屋は続けられない。でも、お店は無くしたくない。
戦後、女手ひとつでもできることを……と考え抜いた結果だと聞いています」
■若女将の葉月さん。「赤玉本店』の味を全国に!」との思いで製造工場で勤務することの方が多いそう
「今は私の母が3代目女将としてお店をきりもりしています。
その中で、以前より母は『店を継がなくてもいいんだよ』と言ってくれていました」
葉月さんは大学卒業後、社会を知るために東京で10年ほど医薬業界で働き、家庭を築き、子どもにも恵まれました。
「ただ、この仕事は転勤続きの可能性があって。子どもたちが転校を重ねるのは心が痛かったし、家族で一緒に暮らしていきたいと強く思っていました。
そんな折に、多忙から母が大病を患ってしまって……」
治療中、「店を続けていく自信がない」と気落ちする母の姿を見て、夫と本音でとことん話し合い、医薬業界の仕事を辞めて金沢に戻ってお店を継ぐことを決意。
「子育てをしながら店に立つ母の姿を、幼い頃からずっと見てきました。おそらく母も店に立つ祖母の姿を見てきたことでしょう。だから私もきっとできるのだ、と。
ずっとそばにあった、私にとって当たり前の〈おでん〉が失われてしまうのは嫌でしたから」
■醤油不使用の上品な味わいで、代々受け継がれてきた伝統の出汁で作られる同店のおでん
おでんの具は、地域はもちろん作り手によっていろいろあるもの。
ゆえに、どれが「金沢おでん」なのか……と迷う声を聞いて、金沢市内にある創業50年以上のおでん屋たちが集まり、平成30(2018)年に「金沢おでん」の定義が定められました。
「出汁は各お店ごとに守り続けている味があるので、出汁に決まりはありません。
車麩、赤巻、金沢銀杏を使ったひろず、源助大根など金沢ならではの独特の具を使用していることが重要なんです」
■同店オリジナル具の「赤玉」をはじめ、筆者が好きな具をひとつずつ注文してみました
葉月さんにとって、『赤玉本店』のおでんは懐かしの味。
「幼い頃から食べていましたから。
子どもの頃から絶対選ぶのは赤巻ですね。素朴な味でおいしいんです。メジャーではないですがシュウマイも好きです」
そう話す表情はとてもやさしくて。
食べることで思いを馳せて〈Furusato〉を感じるってこういうことなのかな……と、感慨深く味わいながら、清らかな出汁まで完食しました。
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赤玉本店
076-223-3330
石川県金沢市片町2-21-2
営/12:00~22:00(日祝は21:00まで)、2Fは17:00~
(※おでん完売の際は閉店時間より前に閉店することもあります)
休/月曜、土日祝15:00~16:00
じのもんライター:南出 ときこ
県外から石川県の大学へ進学し、県内の会社でライターとして働くも30歳を前に結婚。「大学までの自分を振り返ると、家族みんなで過ごせる時間は案外少ない」との考えから、家族で楽しめるアクティビティは大歓迎。サブカル女子なので自分の趣味時間も大切。