復興が続く七尾湾。特産の”黒いダイヤ”を広めたい!宣伝部長は「パンナマコッタ」!?

復興が続く七尾湾。特産の”黒いダイヤ”を広めたい!宣伝部長は「パンナマコッタ」!?

石川県七尾市では古くからなまこの水揚げが行われ、地域の食文化の一部として根付いてきました。特に、なまこの腸の塩辛「このわた」や、卵巣を丁寧に加工した「くちこ」は、七尾ならではの高級珍味として全国的に愛されています。

そんな伝統のなまこにもっと親しみを持ってもらいたい。そんな思いでなんともユニークな商品を販売する『なまこや』さんに、お話をお聞きしました。

■なまこ一筋。80年に迫る歴史を持つ老舗です。

『なまこや』を運営する『大根音松おおねおとまつ 商店』。 その名の通り、なまこの専門店です。

社名の「大根音松おおねおとまつ 」は創業者の名前に由来します。
もともと七尾の石崎漁港でナマコ漁をしていた創業者が、昭和20年代に単独で開業したのが始まり。
以来、石崎漁港のほど近くで店舗を構え、七尾を訪れる人々に親しまれてきました。

「創業当時は、今よりずっとなまこの加工業者が多かったそうですよ」 と語るのは、『なまこや』の井上さん。
しかし、近年は海水温の上昇などの影響で水揚げ量が減少。
それに加え、2024年元旦の震災。
もともとの高齢化もあり、廃業を選択する漁師さんも多かったのだと言います。

そんな中「おかげさまで加工品製造のペースは戻りつつあります」という『なまこや』さん。
町の活気を取り戻すため、今日も奮闘しています。

■なまこのコラーゲンでプルプルのパンナコッタ。ショウガ味、ほうじ茶味、いちご味の3種類があります

なまことスイーツ。異色の組み合わせと思いきや…

「なまこと言われて連想するのは、酢の物や乾燥ナマコを使った中華料理ばかり。決して万人受けするとは言えない。でも、自慢のなまこをみんなに食べてもらいたい。ならば、メインではなくデザートにすれば良いのでは?と思いつきました」と井上さん。

そして完成したのが「パンナマコッタ」。
名前を聞くだけでおわかりになると思います。そう、なまこのパンナコッタです。

実はなまこは、非常に淡白な味なのだと言います。
だから、磯のにおいや風味が前面に出ることなく、濃厚な生クリームと見事に調和。
パンナコッタを固めるためのゼラチン成分として、ぷるぷるでツルンとした食感に一役買っています。

「なまこは栄養の宝庫。成分の55%以上がタンパク質で、必須アミノ酸も豊富に含まれています。もっと手軽に、多くの人に親しんでいただければ」。

「海の黒いダイヤ」とも称される七尾湾のなまこ。
その魅力を広める新しいスタイルとして、「パンナマコッタ」は可能性に満ちたデザートなのです。

■七尾市と言うと、「青柏祭」も全国的に有名です。「でか山」と呼ばれる日本一の大きさの曳山が見どころ

全国で出会えた人たちの温かさ。いつか恩返しを

全国各地で開催される物産展にも積極的に参加する『なまこや』さん。 たくさんの励ましの声に人の温かさを感じたと言います。
心に残っているのが、かつて他県での大規模災害を経験した方からの言葉。
「“命があること、生活できていること全てに感謝して、精一杯生きていきたい”とのお話を拝聴し、涙が出ました」。
七尾は、『和倉温泉』を中心に旅館が立ち並ぶ、観光の町でもあります。 しかし、市内に21館ある旅館のうち2025年1月の時点で17館が休館。 泊まれる場所がなく、観光の客足はまだまだ鈍いと言います。
「今は、支援いただいた方々に元気で前向きに頑張る姿を見てもらうことだと思っています」
とお話してくださった井上さん。

『なまこや』さん、そして七尾の人々の歩みが、また次の誰かの希望となることを願って。わたしたちも応援し続けます。

■ユーモアあふれるネーミングながら、味は本格的。なまこの新しい食べ方をぜひ体験してみて。

<じのもんオンラインショップで販売中>

パンナマコッタ(6個)


なまこや
0120-33-7058
石川県七尾市石崎町香島1丁目22番地
営/8:30~17:00
休/木曜
[Instagram]@ noto_namakoya


じのもんライター:中嶋 美夏子

大学進学を機に金沢へ。おいしい食べ物と暮らしに根付く美意識に感動し、日々探求しているうちにいつの間にか十数年が経ってしまった。人々のなにげない日常が撮りたくて、ちょっとしたお出かけでもいつもカメラと一緒。能登からやってきた保護猫とふたり暮らし。

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